第38章 助けたかったのは
解決の兆しも見えないまま、気付けば時計の針は17時を示していた。
「くっそ…わかんねえ。何だこの数字。
足しても引いてもそれらしいものは浮かんでこねえし」
「…もう17時。時間がないわ。
もしかしたら、もっと単純な話なのかも…」
「単純…」
「わからないけど、この数字そのままでどこかを示しているとか…」
その佐藤の言葉を聞いて、俺はピンと来た。
「まさか…緯度と経度じゃねえか」
「え…」
急いで、一課の情報解析係の席に行き、数字を見せながら尋ねた
「もしこれが、緯度と経度だとしたら、示している場所はどこだ」
すぐさまPCのキーボードをカタカタと打ち、緯度と経度が示す場所を解析し始める後ろで、俺はその画面をじっと睨んでいた。
「ちょっと待って…出た。
これは…東京国際タワービルですね」
「東京国際…」
その名前を聞いたとき、数日前にミコトとした会話を思い出した。
「有名な外科医が登壇する講演会があるの。
東京国際タワービルで。」
まさか…ミコト…は今そこに…
俺はすぐに自分のデスクのPCを開き、東京国際タワービルの公式サイトから今日開催される催しのスケジュールを確認した。
脳外科医学講演会 14時~16時
そう書いてある。
はっと時計を見るともう17時15分
講演はとっくに終わっている時間だ。
俺は即座にミコトに電話をかけた。
プルルルルルルル
プルルルルルルル
「出ろよ…頼む…ミコト」
プルルルルルルル
プルルルルルルル
2回、3回、4回とコールを重ねるたびに、携帯を持つ俺の手が震えてくる。
只事じゃない様子の俺を見て、佐藤は心配そうに顔を覗き込んできた。
「…松田くん?」
「東京国際タワービル、そこにミコトがいんだよ…」
「えぇ!?」
「っ…くっそ…なんで出ねえんだよ」
プルルルルルルル
プルルルルルルル