第38章 助けたかったのは
松田side
警部に連絡をもらい、警視庁に戻ったのは14時を過ぎた頃だった。
「警部、戻りました」
「佐藤くん。松田くんも。…これを見てくれ」
一課の執務室に戻った俺たちに、警部はあるFAX用紙を手渡してきた。
「…これは…」
佐藤がその紙を見て目を見開いたのを見て、俺も横目でそれをチラリと見た。
ーー
無能な警察諸君
今日、11月7日 17:17
東京の35.6767378 139.7635294で大きな花火があがる
ーー
大きな花火…
その単語を見た瞬間、俺は3年前のあの事件を瞬時に頭に浮かべた。
萩原を死に追いやったあの忌まわしい爆弾事件を。
だが、なぜ今日…?
毎年、11月7日にFAXで数字だけが書かれた奇妙な紙が送られて来ているのを耳にしたことがある。
一昨年が3、去年送られてきたのは2 だった
今年は1のはず。
爆弾のカウントダウンとしたら、事件が起こるのは来年のはずだ。
俺は血相を変えて目暮警部の肩を掴んだ。
「…警部さん、毎年FAXで数字だけが書かれた紙が送られてくるって言ってたよな。それは今年は?!」
「それもさっき届いたよ」
そう言って、目暮警部は俺に違う紙を手渡した。
案の定、そこには「1」とだけ書いてある。
「…別の犯人かそれとも…」
「いたずら…にしては手が込みすぎてるわね。
この数字、何を示しているのかしら」
「ワシもさっきからずっと考えているんだが、どうにも検討がつかなくてな」
「けど、もしこれが本当なら、爆発まであと3時間しかないわ…」
「警官を配備するにも、場所の検討がつかんことには…
ひとまず、都内の所轄に連絡して不審物がないか聞き込みを開始しよう。
我々は、この数字の意味をなんとしても解き明かすんだ」
目暮警部のその号令とともに、一課の刑事たちはそろってその紙に書かれた数字とにらめっこした。
35.6767378 139.7635294
これが何を示すのか、そしてこの予告は萩原を殺した犯人と同一人物なのか別人なのか
わからないことだらけでただ時間だけが無情に過ぎていった。
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