第38章 助けたかったのは
13時 杯戸駅
藍沢先生と合流したわたしは、講演会の会場である東京国際タワービルに到着した。
27階の大ホールで行われる講演会には、全国から医学を志すものやすでに医療現場で活躍している医師・看護師などが集まり、会場は満員になっていた。
「登壇者が豪華だからか、こんなに人が入ってる講演会初めて…」
「普段忙しい医療従事者がこの人数集まるんだから、相当だな」
隣に座った藍沢先生も、ホールに埋め尽くされた人数を見て珍しく目を丸くした。
「あ、講演中は携帯の電源切らないと。
ほら、藍沢先生も」
「…でも、急患の連絡が…」
「それは、病院にいる先生にまかせて!
もう。せっかく講演会に来たのにゆっくり聞けないじゃない」
「…指導医は俺だぞ」
思わず指導医を叱るわたしに、藍沢先生が静かにツッコミをいれる。
すっかり慣れたこのやり取りをしたあと、開演のブザーが鳴り会場が暗転した。
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