第38章 助けたかったのは
松田side
昨日萩原の3回目の墓参りを済ませた俺は、そのまま庁内に泊まり込み、11月7日を迎えた。
相変わらず朝から事件、事件。
今日はずっと自分のデスクから動かねえと意気込んでいたがそうも行かず、朝っぱらから佐藤と一緒に事件の聞き込みに駆り出され、もう13時だ。
「ちょっとなんなの?さっきのあの聞き込みの仕方!
ヤクザじゃないんだから」
「うるせぇな。
あのヤローが俺の聞いてることにさっさと答えねぇからだよ。」
フンッと鼻息荒く言い捨てて、頬杖付いて窓の外を見る俺を、佐藤は呆れた目をして見た。
「何をそんなにイライラしてるんだか」
「別に、イライラなんかしてねえ」
「してる」
「してねえって」
「してるわよ」
「どこがだよ!!!」
ガーーッとまるで獣みたいに声を荒げた俺に、佐藤は ほらやっぱり。というような顔を見せた。
たしかに、これでイライラしてませんという方が無理な話だ。
「ったく。何か嫌なことでもあったの?」
「…彼女が、俺のすっげぇ嫌いなやつと出かけてんだよ」
言葉にすると、またイライラが頭に登ってきた。
確か講演会は昼過ぎからと言っていたな。
本当に横で並んで講演を聞くだけなんだろうな…!?
あの男、病院の外にミコトを連れ出して手を出そうと画策してんじゃねぇか…?
あんなイケメンです女に困ってません。みたいな顔しておいて、ミコトに手ぇ出したらぶっ殺すからな…