第38章 助けたかったのは
「…また、あいつか…」
「で、でも医学講演に行きたいだけでそれ以上でもそれ以下でもないよ?」
悪いことしてないのに悪いことしてる気分になりながらそう弁解すると、陣平くんは少し考えたあと、はぁ…とため息を吐いた。
「いや…そうだよな…
悪い…俺が過剰に反応しすぎだわ」
「講演が終わるのが18時ごろだから、もし陣平くんと時間合えばお外でご飯食べない?
桜田門まで迎えにいくから!」
「あぁ。その時間なら何も事件が起きなけりゃ外で落ちあえるぜ」
「ほんと??
やったー!」
「何も起きなければ。な?」
「何も起こんないよ!
じゃあ、行きたかったイタリアンのお店予約しておくね!」
陣平くんのあの事件が起こるのは来年だし、今年は大丈夫なはず。
と、陣平くんと久しぶりのお外デートに胸を躍らせながら、まさか今年の11月7日も忌まわしい事件に巻き込まれることになるとは思いもよらなかった。
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