第38章 助けたかったのは
その晩
珍しく陣平くんが夕方に家に帰ってきた。
この時間に陣平くんとご飯を食べられるなんて、明日は大雨?槍でも振る?
なんて思いながら、久しぶりに二人で食卓を囲んでいる。
「お。今日は肉じゃがか」
「あ!陣平くん、ちゃんとサラダも食べてよ??」
お肉ばかり食べようとする陣平くんを叱るわたしは母親なのか。
普段は陣平くんのほうがずっと大人っぽくて年上らしいのに、たまにみせる少年のような振る舞いに母性本能をくすぐられまくりのわたしだ。
「あ。そうだ陣平くん。
今年のお兄ちゃんのお墓参り、いつ行けそう?」
「あー…命日は無理そうだから、前日かな。去年と同じで」
「そうだよね。わたしも前日だと助かる」
「?なんかあんのか?」
これまで基本的に命日は何も予定を入れなかったわたしだから、その一言を聞いた陣平くんは珍しそうに首を傾げた。
「有名な外科医が登壇する講演会があるの。
東京国際タワービルで。
ちょうどお兄ちゃんの命日なんだけど、お墓参りは前日だし問題ないよね」
「…まあ、萩原がいいって言うならな」
「いいって言うよ!お兄ちゃん、ミコトが医者になるの楽しみだなーってしきりに言ってたし!」
「萩はお前に激甘だったからな。
で、お前1人で行くのか?」
「ううん?米花中央病院の先生と」
わたしがそう言った瞬間、またお肉を掴もうとしていた陣平くんの箸がピタリと止まる。
「…それってまさか」
「?藍沢先生だよ?」
この間から何故か藍沢先生に敵意を剥き出す陣平くん。
その名前を聞くや否や例のごとく不機嫌そうに顔をしかめた。