第38章 助けたかったのは
「あぁ。俺の大学時代に世話になった教授も登壇することになっていて。
お前のこと、電話で話したら会ってみたいと言っていた」
「…わたしのことって…どんな話したんですか?」
「変な医学部生が実習に来てるって」
「へ、変!?」
どんな紹介の仕方してくれてんのよ!と思わず口に出して言いそうになったが、きっと顔に全面的に出ていたんだろう。
藍沢先生はわたしのむくれた顔をみてフッと笑いながら言った。
「まぁいいだろ?どんな紹介してようと。
じゃ、今度の日曜日。杯戸駅の改札前に13時。」
「はい!…あ。」
今度の日曜は11月7日。
それは、わたしにとって大切な日。
兄の3回目の命日だ。
断ったほうがいいのだろうか…なんて考えたけれど、きっとお兄ちゃんは言うだろう。
俺の墓参りより、医者の勉強してこいって。
去年のお墓参りは前日に行ったし、きっと今年もそうなるだろう。
陣平くんは、11月7日は必ず庁内であの爆弾犯からのコンタクトを待つと言っていたし。
「?どうした?」
「…いえ、日曜日よろしくお願いします」
いろいろ考えたけれど、きっとこれが正しい判断だ。
そう思い、11月7日のお兄ちゃんの命日の日にある講演会に参加することになった。
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