第38章 助けたかったのは
外科の実習期間を終え、次に心療内科、産科と回った後、内科の実習に入った。
1番ハードな外科を最初にこなしたおかげで、わたしの班は比較的スムーズに内科の実習に臨めている気がする。
そんな手応えを感じながら、今日も内科の医局で内科指導担当の先生と患者さんについて話をしていたとき、医局のドアがコンコンとノックされた。
「失礼します。」
「藍沢先生…!」
中に入って来たのは、外科実習の担当医であり、わたしの臨床実習全体の指導医でもある藍沢先生だ。
「萩原。ちょっといいか」
「?はい」
内科の先生との話は一通り終わったところだったので、わたしは藍沢先生に呼ばれるがまま医局を出た。
近くの自販機のそばに設置されているベンチに腰を下ろしたわたしたち。
藍沢先生は徐にわたしに1枚の紙を見せた。
「これ、今度の日曜日、東京国際タワービルで開かれる講演会。
著名な外科医や救命医がこれまで携わった症例について講演をするんだ。
…お前も来るか?」
「え…!行きたいです!いいんですか?」
登壇者に名前を連ねているのは、後の医学界の権威と呼ばれる医者ばかりで、わたしはタイムスリップする前、この人達の論文を何度も目にしたことがあった。
生の声が聞けるなんて…と思ってもみなかった朗報に心が踊った。