第37章 朝帰りのお仕置き ☆
「萩原…」
「ん…」
誰かがわたしの名字を呼ぶ声がした。
陣平くんは、わたしのこと萩原なんて呼ばないのに、何故か寝ぼけ眼で陣平くんに呼ばれた気がしたわたしは、いつものごとくわがままを言う。
「おい、萩原。起きろ」
「んー…もう少し寝るぅ…」
「…始発、もう動くぞ」
始発…?
その現実的な単語を耳にしたわたしは夢の中から現実へと一気に意識を取り戻す。
「へ…」
がばっ!と身体を起こしたわたし。
ここは自分の家のベッドではなく、米花中央病院の外科医局の仮眠ベッド。
そして目の前にいたのは陣平くんではなく
「藍沢先生…」
そうだ。そういえば昨日はテキストを忘れて医局に戻ったあと終電逃してそのままカルテ整理の手伝いをしていたんだっけ…
いつの間にか寝ちゃったのかわたし…
先生は間抜けな顔してポカンとしてるわたしを見て、はぁ…とため息を吐きながら言う。
「手伝うって言ったくせに、結局寝てばかりだったな」
「す、すみません…あの、もしかして藍沢先生がわざわざベッドに運んでくれたんですか?」
「…目の前のデスクの上で寝られると、気が散ったんだよ」
「め、面目ないです…」
結局、藍沢先生の仕事を減らすために残ったくせに、ほとんどを寝て過ごし挙句、藍沢先生にベッドまで運ばせたとわかり、さすがのわたしも申し訳なさでいっぱいになった。
「いいけど…時間は?大丈夫なのか?」
「ほんとだ。もう始発動く時間だ…
じゃあわたし、帰ります。
なんか、全然お役に立たずすみませんでした…」
「あぁ。おつかれ」
そんなことないよ。なんて言わないあたり、藍沢先生らしい。
失敗したなあ…と自分自身に呆れながら、医局のドアを開けたとき、藍沢先生が不意にわたしの名前を呼ぶ。