第36章 疑惑の朝帰り
んだよ…藍沢藍沢って…
ミコトが憧れだと言い張るあの男の顔をぼんやりと思い出してみるけれど、まあ端正な顔立ちをしていた気がする。
研修医ではなく医師ということは、確実に俺よりも年上だし下手をすれば30を超えているんじゃないか…?
見た目は30代には見えなかったし、その場にいた女達はみんなあの男を見て目をハートにしていた。
萩原や降谷とはまた違ったタイプのクールなモテ男という感じだ。
そんな顔よし、頭良しが揃ったあの男がミコトの指導医…
オマケにミコトの憧れの医者…
俺の頭を悩ませるには十分すぎるぐらいの要素だ。
ムカつく…
そう思いながらガタンと立ち上がると、ミコトは目を丸くした。
「あれ?陣平くん、おかわりいらないの?」
「いい。飯はもう十分食ったから、次はミコトを食いたい」
ミコトの気持ちが俺にちゃんと向いているのかを確かめたい。
そんな言い訳をして、まだ食事中だったミコトの腕を引いてベッドに押し倒した。
最低だ。
酷いことをしているのに、ミコトは俺の顔をじっと見つめて、その目が好きだと伝えてくれる。
それに心底安心して、ミコトの唇を強引に奪い、手で胸をやわりと揉んだとき、ミコトはビクッと身体を震わせて言う。
「あっ…、だ、だめ!!ダメ!!!」
いつものダメとは違って、本当に駄目なときの声だ。
思わず身体を上げてミコトを見ると、ミコトは真っ赤になった自分の顔を手で覆った。
「悪い…嫌だったよな…」
そりゃそうだ。
食事中にいきなり腕引っ張ってベッドに押し倒して、ミコトの反応なんて無視して抱こうとしたんだから。