第36章 疑惑の朝帰り
松田side
自宅に帰ると、実習を終えたミコトがきちんと夕食を用意してくれていた。
いつもと比べて少しも手抜きをしていない豪華な料理に、頭が上がらなくなる。
文字通り、ミコトにがっちり胃袋を掴まれている俺は、生姜焼きを腹いっぱいに平らげた。
「で、初日どうだった?って言っても、医学のこと説明されても俺にはわかんねえけど」
「それがね!この間爪楊枝で輪ゴム渡しをする寸前だった藍沢先生がわたしの指導医だったの!」
「…え???」
今何と????と、心の底からの「え?」に、ミコトは気付くそぶりもなく続ける。
「びっくりだよね!
でもね、藍沢先生はわたしのこと全然覚えてなかったの!
あんな至近距離で見つめあったくせに、誰??って!」
「…藍沢って…お前が前に憧れの医者だと言ってた…?」
「そう!すごく尊敬してる先生で、藍沢先生が指導医で嬉しい!臨床実習、学ぶことたくさんありそう!」
屈託ない笑顔で、純真無垢にそう言うミコトだが、俺は内心イライラしていた。