第5章 妹なんかじゃない ☆
しばらくすると、脱衣所のドアがコンコンと鳴る。
「ミコト、買ってきたぜ」
「ありがとうー!
あの、中に入って渡してくれない?
身体濡れてるから、お風呂場から出られなくて…」
「…しょうがねぇな」
そう言うと、お風呂場のドア前まで陣平くんが持ってきてくれた。
お風呂のすりガラスみたいになったドアに、陣平くんのシルエットがぼや…と映る。
わたしはそのまま、バスタブから出ると、少しだけドアを開けてひょこっと顔を出した。
「おまっ!急に開けるなよ!」
わたしの顔と右肩だけが見えている状態を見た陣平くんは、焦りながら顔を向こうにぐるんっと向けた。
「だって、ドア開けなきゃ受け取れないでしょ?
ありがとう」
そう言ってメイク落としを受けとると、陣平くんは即座に脱衣所から出ていこうとする。
「あ!陣平くん!待って!」
「まだ何かあんのか」
「わたし、寝るときの服持ってない!
あと、なんの偶然か、今日お昼にショッピングしてる時に買った下着がわたしのかばんのそばにある紙袋に入ってるから、紙袋ごと持ってきてくれない?」
「…なんか、すっげぇ悪いことしてる気分だわ」
「え?」
「いや、なんでもねぇ。ドアの前に置いておくよ」
陣平くんはそう言いながらまたため息を吐いて、脱衣所を出ていった。
メイクを落とし、陣平くんと同じシャンプーで髪を洗うと恐る恐る浴室のドアを開けた。
すると目の前に、陣平くんのスウェットとズボン、わたしの下着の入った紙袋が置いてある。
陣平くんの!スウェットだ!!!!
タオルを身体に巻いた状態で、ばっとそれを拾い上げたわたしは、ふんふんと服の香りを嗅いだ。
今日一晩、これ着て眠れるなんて、最高だ…
そんなふうに呑気に思いながら、わたしはるんるん鼻歌を歌って着替えた。