第36章 疑惑の朝帰り
米花中央病院に到着したわたしは、まずはチームごとに分かれて米花中央病院の施設を一通り案内してもらうところから実習が始まった。
「このチームは、最初の1ヶ月は外科医学の実習なので、外科病棟は最後に回りましょう。
まずはここが…」
病院の中を案内してくれる、少しお偉いさんのドクターは手早く簡潔に施設の説明を始める。
メモを取りながら米花中央病院の設計を事細かに頭に入れていくわたし。
爆弾が仕掛けられるとしたら、どこだろう…
やっぱり外来患者や病床数が多い、第一病棟だろうか…
問題は第一病棟のどこなのか?なんだよね…
外から来た犯人が仕掛けやすいのは、やっぱり専門、外科、内科それぞれの外来フロア…
と、広い広い施設内を歩きながら、改めて爆弾を仕掛けられる場所の特定が非常に難しいことを自覚した。
そもそも素人のわたしに見当つくはずないよ…
どうしてあの頃のわたしは、お姉ちゃんに、米花中央病院の爆弾はどこに仕掛けられてたの?って聞かなかったんだろう…
あの頃は、陣平くんが亡くなって、そんなこと聞いてる余裕なかった。
聞いたって、陣平くんは帰ってこない。
そう思って、事件の話はしばらく禁句になってたぐらいだ。
「はい、ここが最後、外科病棟です。
このチームは外科から実習スタートなので、まずは皆さんそれぞれに付く指導医を紹介しますね。」
気付けば病院施設紹介は終わっていて、わたしたちは外科病棟でお世話になる指導医との顔合わせタイムに突入していた。
「萩原さん」
「はい!」
「萩原さんの指導医は、脳外科の藍沢先生です」
「あいざ……っ…えええ?!」
見ると、紹介してくれている先生の隣に、あの合コンで鉢合わせたかつての指導医、藍沢先生が立っている。