第35章 もう一度会いたい人 ☆
見ると、幼稚園生ぐらいの女の子が自動販売機の隣で座り込んで泣いている。
わたしの隣にいた陣平くんは、即座にその子に駆け寄った。
「おい。どうした?
パパとママは?」
「どっか行っちゃったの…」
そう言って泣く女の子の頭をぽんぽんと撫でながらあやしてあげる陣平くん。
なんか、陣平くんってお巡りさんなんだな…って不謹慎ながらも感動してしまった。
「陣平くん、迷子センターに連れてった方が…」
「うーん。そうだな…
けど、動物園の園内放送って聞き取りにくいし、親は必死に探しているから放送に耳傾けてねぇかも…」
「そっか…そうだね…
いずれ探しにくるだろうし、一緒に待ってあげよう?
1人にしておけないし」
「でも、いいのか?動物園まだ全然見て回れてねぇのに」
「いいに決まってるでしょ?
ね、パパとママが迎えにくるまでお姉ちゃんとお話ししてよっか?」
女の子の隣に座って頭を撫でてあげると、女の子は少し不安そうな顔をしながらも、コクリと頷いた。
「わたし、ミコトって言うの。
あなたのお名前は?」
「…サクラ」
「サクラちゃん?可愛い名前だね!
パパとママと来たの?」
「うん。それと、おにいちゃん」
サクラちゃんはニコッと笑った。
「お兄ちゃんいるんだ!」
「うん!サクラ、お兄ちゃん大好き」
わたしと同じだねって言いかけた時、なぜか自分のお兄ちゃんを思い出して泣きそうになった。
わたしも、お兄ちゃんのこと大好きだったから、この子がかつてのわたしに重なって見えたから。
その時だった。
「あ!サクラ!いた!」
「お兄ちゃん!!」
サクラちゃんを探しに来たのは、彼女より少し年上の男の子。
一目散に走ってきてサクラちゃんのことぎゅっと抱きしめてあげてる。
「心配したんだぞ!」
「ごめんなさい…
お兄ちゃん、サクラを見つけてくれてありがとう」
サクラちゃんを迎えに来たお兄ちゃんは、わたしと陣平くんの方を見てペコリと頭を下げたあと、サクラちゃんの手を握ってお母さん達の元へと帰って行った。
そんな様子をぼんやりと眺めていたわたしの目から、一筋涙がこぼれた。
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