第35章 もう一度会いたい人 ☆
「ねえ!!陣平くん見て!猿がいっぱいー!」
「猿って…他にもっと見るべき動物あんだろ…」
お猿さんがたくさんいる檻を指差してきゃっきゃと騒ぐわたしを、陣平くんは呆れた様子で眺めた。
「ねー、あのお猿さん陣平くんに似てる!」
「はあ?!」
「ほら!あの癖っ毛の猿!
癖っ毛を毛づくろいしてあげてる子がわたしだ!」
動物園に来るのは実に小学生以来だ。
久しぶりのこの雰囲気にテンションが上がったわたしは、カシャカシャと携帯のカメラのシャッターを切る。
「俺のどこが猿なんだよ…」
陣平くんは不満そうにブツブツ言いながら、近くの灰皿が置かれているベンチに座ってタバコをふかし始めた。
「あ!あっちはコアラがいるんだって!」
そう言って一目散にコアラの方へ走っていくわたしを見て、陣平くんは慌ててタバコの火を消して追いかけてくる。
「おい!迷子になるぞ!」
「ならないよ!何歳だと思ってるの!」
あははと笑いながらそう返事をしたけれど、実は小学生のときに家族で動物園に来た日のこと。
こんな感じで動物に気を取られていつのまにか迷子になった経験がある。
あれからもう15年以上も経ったんだな…
ついこの間みたいに感じるのに。
そんなふうに懐かしみながらお目当てのコアラを堪能したわたし。
次はペンギンが見たい!とまた陣平くんを振り回しながらペンギンの水槽のある方へ走り出そうとした時
「うぇーーん」
近くで子供の泣き声が聞こえた。