第35章 もう一度会いたい人 ☆
拗ねた女の機嫌を直す方法
萩原にレクチャーしておいてもらうべきだった…
今更そんなこと思いながら、とりあえずミコトの機嫌は携帯を受け取ってから宥めようと決め、インターフォンのモニターをつけた。
「はい。」
「松田くん?今オートロックのところまで来たんだけど」
「取りに行くわ。そこで待っててくれ」
「あ!待って!あの…申し訳ないんだけど…
お手洗い貸してくれない…?」
「…んじゃあ、どーぞ」
流石に嫌ですとは言えず、俺はオートロックの鍵を解除した。
そして5分も経たないうちに、玄関前のインターフォンが鳴る。
ピンポーン
その音を聞いて、玄関のドアをガチャリと開けると、いつも通りスーツ姿の佐藤美和子が俺の携帯を持って立っていた。
「はい、これ携帯」
「あぁ。サンキュー。助かったぜ。
トイレ、そこのドア」
「ありがとう…!悪いわね」
手でゴメンのポーズをしたあと、佐藤は足早にトイレに向かった。
俺はと言うと、ミコトの様子を見に寝室のドアを少しだけ開けて中を覗いた。
ミコトはベッドの上でふて寝しているようだ。
なんだよ…
あんな身体ちっさく丸めて…可愛いかよ…
拗ねてるミコトも結局可愛くて、思わず顔が綻んでいると、佐藤がトイレから出てきて玄関に向かった。
「貸してくれてありがとう」
「どういたしまして」
「…あ。」
俺の背後に目を向けた佐藤は、何かを見つけたようにつぶやいた。
後ろを振り返ると、ミコトが寝室のドアからひょこっと顔を出して俺たちの様子を伺っている。
小動物みたいなその様子に、俺はまたプッと吹き出しながら言う。
「ミコト。こっちこいよ」
手招きしてやると、ミコトは少し迷ったあとちょこちょこと俺のそばに寄ってきた。