第35章 もう一度会いたい人 ☆
たった一度、しかも寝言という不確かな「好き」を聞いて、こんなに佐藤さんのことが気になってしまうのは、彼女がどこか姉に似ているから。
陣平くんがかつて好きだった、わたしの姉に。
「全然似てねえだろ…まず髪の長さが…」
「外見のこと言ってるんじゃなくて!
似てるよ…だから、陣平くんが好きになるんじゃないかって…不安なの」
そんなこと言われてもどうしようもないのに、陣平くんはわたしを抱きしめて髪を撫でてくれる。
「心配しなくても、好きにならねえよ」
「どうしてわかるの?」
「ミコトがいるからに決まってるだろ?」
何言ってんだ?と、当然のようにそう言ってくれる陣平くん。
けれどわたしにはまだそれだけじゃ安心が足りないらしい。
「…じゃあ、好きって言われたらどうするの?」
「言われねえって」
「言われたら!」
「ゴメンナサイ。以上」
「…信じていいよね…?」
そのとき
ピンポーン
ドアのインターフォンが鳴る音がした。
このタイミングで、話題の人物が早くも携帯を届けにやってきたのだ。
*
*