第35章 もう一度会いたい人 ☆
まだ眠いらしく、目を擦りながらふにゃふにゃした声を出すミコト。
バッグに入っているはずの自分の携帯が机の上に出ているのを見て、疑問の声をあげた。
「あれぇ…わたしの携帯…」
「あ、あぁ。実は俺、昨日あの店に携帯忘れちまったらしくて。
同僚が30分後に家に届けてくれるっていうからその連絡がミコトの携帯に…」
「同僚って…佐藤さん?」
「…そ。佐藤サン…」
恐る恐るそう答えた俺。
するとミコトの顔はみるみるうちに不機嫌になって行く。
「…ふぅーん。」
口を尖らせて、拗ねたように下を向くミコトを、不謹慎にも可愛いなんて思う俺。
と言うか、こいつなんでそんな佐藤のこと敵対視してんだ…
家に連れて帰ってきたのがそんっなに嫌だったのか…
ミコトのヤキモチの根幹がどこにあるのかわからずにいると、ミコトは尖った口のまま不満そうに言う。
「わざわざお家まで届けてくれるなんて、優しいね」
優しいね。なんて言葉とは裏腹に、不機嫌を隠そうとすらしないミコト。
完全に地雷を踏んだらしい俺は、このあとどうにかミコトの機嫌を直すにはどうすればいいか、そればかり考えていた。
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