第35章 もう一度会いたい人 ☆
「もしもし。松田さんの携帯を拾った者なんですが…」
受話器を上げて第一声。
その声を聞いて、誰が俺の携帯を拾ったのかすぐにわかった。
「…あんたか。」
「え?!その声、松田くん!?」
「俺の彼女に何か用っすか?」
なぜ佐藤がミコトに電話をかけてきたのか、わかっていながらそんな風にワザと尋ねると、佐藤はムキになって言い返してくる。
「よ、用なんて無いわよ!
松田くん、昨日携帯を店に忘れて行ったでしょ?
私、これから松田くんの家の近くで白鳥くんと張り込みなの。
家にいるなら届けようかと思って」
「あー…いや、いいよ。
明日出勤した時に受け取るわ」
「でも、せっかくの非番なのに携帯無いと不便でしょ?」
そりゃ不便は不便だけどよ…
と、どうしたものかと少し考えたが、確かに今日これからミコトと何処か出かけるにしても、携帯は手元にあった方がいいか。
そう思い直した。
「…じゃあ、悪いけどよろしく頼むわ。
昼までなら家にいるから」
「分かった。じゃあ持って行くわ。
あと30分ほどで着くと思うから。」
そう言って佐藤は電話を切った。
まぁ、ミコトが昨日怒ってたのは、女を家に連れて帰ってきたからで、別に佐藤と口聞くなとか言われたわけじゃねえしな。
気にしすぎか…
とにかくミコトを怒らせたくない俺は、ガラにもなく気を使いすぎてしまっているらしい。
ふぅ…と余裕のない自分にため息を吐いて電話を終えたミコトの携帯を机の上に置いた時、背後から可愛い声がした。
「じんぺーくーん。
何でベッドにいないのお?」
振り返ると寝起きのミコトが俺の姿を探してベッドから起き上がってきていた。