第34章 嫉妬の嵐
佐藤side
まるでドラマのワンシーンみたいだ。
松田くんが彼女の肩を抱いて、俺はこいつの彼氏だって宣言して彼女を連れ出すとき、そう思った。
それと同時に思い知らされる。
結局松田くんは彼女が一番大切で、昨日私を介抱してくれたのは私じゃなくても誰でも同じようにしていたわけで。
つまり、私は松田くんにとってはただの同僚のそれ以上でもそれ以下でもない。
わかってた。
こんな気持ち、即座に消さないとロクなことにならないと知ってた。
それをせずに騙し騙し、彼を密かに想っていたツケがまわってきたのだろうか。
「おや?それ、佐藤くんの携帯かね?」
不意に目暮警部にそう聞かれ、指差す方を見るとテーブルの上、私が座るすぐそばに黒い携帯電話が置いてあった。
「いえ…私のじゃ…
松田くんのですね」
その携帯には見覚えがあった。
よく彼が、友達にメールを打っていると言いながらその携帯を触っているのを見てたから。
「今ならまだ走れば追いつくんじゃないですか?」
白鳥くんがそう言って、それを届けようと立ち上がったのを静止するみたいに私がガタッと立ち上がる。
「…私が、届けてきます」
「あ、あぁ。頼んだよ佐藤くん。」
私は松田くんの携帯を握りしめて店の外へ出た。
まだそんなに遠くに行ってないはず…
走ればきっと追いつける。
そう思って、駅までの道のりを履き慣れたヒールで走る私。
携帯なんて、明後日出勤した時に渡せばいいのに。
休みの間に携帯が無いと松田くんが困るだろう。なんて思いから、走る足を止めなかった。
そして、駅までもう少しのところで、遠くに松田くんと彼女が立ち止まっているのが見えた。
良かった…
ギリギリセーフ
そう思った瞬間、私はピタッと足を止める。