第5章 妹なんかじゃない ☆
少しも成長しないわたしたちの関係に、わたしはずーーんと落ち込む。
「なんで落ちてんだよ」
「陣平くんは、わたしと一晩一緒にいても、何も思わないんだ…」
「あー?」
「わたしに興奮しないんだ!!」
そう言いながら、鞄を持って陣平くんの家を出て行こうとした時、陣平くんがわたしの腕を掴む。
「待てって!だから、夜道は危ねぇって言ってんだろ?」
「危なくても良い!!
だって、このままここに泊まって、何もなかったらわたしものすごく惨めだよ!?」
好きな人と一晩一緒にいて何も無いなんて、脈無しの証明みたいなもんじゃん。
そんなワガママなことを言うわたしに、陣平くんは呆れたようにため息をついた。
そして、わたしの手を引き、わたしと陣平くんの距離が一歩近づいた時
陣平くんの唇がわたしの唇に重なった。
わたし、今…
陣平くんとキスしてる…?
まさかすぎる夢みたいなこの時間が、現実
初めて感じる陣平くんの唇が、思った以上に柔らかくて、きゅぅんと胸が高鳴った。
ゆっくりと唇が離れる時、ちゅ…とリップ音が鳴り、陣平くんがわたしの顔をじっと見ながら言った。
「これで、なんかあったって言えるだろ。
…大人しく、泊まってけ」
それだけ言って、またくしゃくしゃとわたしの頭を撫でると、陣平くんはボリボリと頭を掻きながらローテーブルの前に座るとまたカレーを食べ始めた。
「…ずるい…」
わたしのファーストキスは、あっさりと陣平くんに奪われたのだ。