第5章 妹なんかじゃない ☆
その時
ガチャガチャッ
鍵を開ける音がして、わたしはお風呂場から玄関のドアの方に走った。
「陣平くん!お帰り!」
「…お前も、暇だねぇ」
「医学部生舐めないでよ?
これでもめちゃくちゃ忙しいんだから!」
そう言いながら顔を膨らすと、陣平くんが笑いながらハイハイと言い、わたしの髪をくしゃくしゃっと撫でた。
好き…
何度もこうして髪を撫でられているのに、毎回お手本のように胸がときめく。
「お、今日はカレーかー!美味そー!」
「お仕事で疲れてる陣平くんのために、がっつり糖質たっぷりのカレーです♡」
「…太りそう俺」
そう言いながら、ローテーブルに座った陣平くんの前に、カレーとスープ、サラダを並べた。
「召し上がれ」
「いただきます」
丁寧にいただきますをして、口に掻き込んでいく陣平くんを眺めるこの時間が好き。
「お前、明日朝から授業?」
「うん。だから、陣平くんが食べ終わって洗い物したら帰るよ」
「今何時だと思ってんだよ…」
携帯で時刻を確認しながら、陣平くんが呆れた声で言う。
ただいま夜の22時。
終電はまだあるし、大丈夫かなと思ってた。
「だって…」
「…授業の準備は持ってんのか?」
「あるよ。大学からそのまま来たから」
そう言いながら、わたしは自分のバッグにパンパンに詰まった教科書に目を配った。
そんなわたしを見て、陣平くんがまさかの提案をする。
「泊まってけよ」
その単語を理解するのに、医学部生の脳ですら10秒はかかった。
そして、わたしは突然大声で驚きながら後退りした。
「えええええ!!」
その声の大きさに驚いた陣平くんが、ゴホッとむせ返りながらわたしを呆れた目で見て言う。
「あー?!夜道を1人で歩くより、俺と一晩過ごす方が安全だろ?どう考えても」
「そ!そうなの?!」
と言うことは、まだわたしを女として見てないんだ…