第34章 嫉妬の嵐
この論文は、わたしがタイムスリップする前、確か22歳の時に大学のPCで読んだ論文。
多分、今もう書いてるはず…!
と、一種の博打みたいな会話を繰り広げるわたし。
「そうか。」
「あと、藍沢先生が別の病院の救命医として働いている時の論文もいくつか読みました。
どれも興味深いものばかりで…!
あ、特に低体温症の患者をバスタブで温めながら蘇生させた症例とか…!
あと…」
憧れのドクターに再会して興奮が覚めないわたしは、次から次へと藍沢先生の受け持った症例を挙げていく。
すると、その様子を見ていた藍沢先生がクールな顔してプッと吹き出した。
「フッ…」
「え??」
「いや?合コンに来ているくせに、そんな話ばかりするんだなと思っただけだ」
「ご、ごめんなさい…
実はこの会、実習先のドクターとの交流会って聞いて来たので、まさか合コンとは…」
「俺も同じだ。あいつに騙された」
そう言って、幹事を指差す藍沢先生。
それに気付いた幹事は、笑いながら茶化す。
「おー?なんだよ藍沢ー!」
「別に。俺たちは騙されて連れて来られたって話をしていただけだ」
「人聞き悪いなぁー。
医大生が現役ドクターに聞きたいこと聞く会。
間違ってないだろー?
な、萩原ちゃん」
幹事の声が大きいせいで大注目を浴びているわたし。
なんで急にわたしに振ってくるの!?
そう戸惑いながらも、なんとか返したわたし。
「…まあ、たしかに。
藍沢先生はわたしの憧れのドクターなので、お話出来て嬉しいです」
「萩原ちゃんー、藍沢に惚れたな?」
「ち、違います!!そんなんじゃないです!」
あくまでも藍沢先生はドクターとして尊敬しているだけ!
わたしが惚れてるのは今まさに隣のテーブルにいる松田陣平なの!!
と、大声で叫びたくても言えないこのもどかしさを感じながら、わたしはまた隣にいる藍沢先生に、米花中央病院での勤務についての聞き取りを開始した。
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