第34章 嫉妬の嵐
クールというか何考えてるか分からなかったな…あの頃も。
患者の脳みそしか興味がない男。なんて、周りのドクターから言われていたけど…
合コンなんて、来るタイプだったんだ…
時を超えてまた出会った指導医。
不思議な感じだな…とぽけーっと藍沢先生を見ていると、隣に座ってたアユがわたしに耳打ちした。
「ねぇ、ミコト!」
「ん?」
「藍沢先生、超イケメンじゃん!
このビジュアルで脳外科医なんて、ドラマだよ!!」
そう言われ、ハッと他の女子の顔を見るとみんな藍沢先生を見つめてポーッと目をハートにしている。
「あー…まぁ確かに、患者さんにも人気あったわ…藍沢先生」
「ん?やっぱり知り合いなの?」
「えっ!いや?!全然??」
またボロが出そうになったわたしは、誤魔化すみたいにお酒をグッと飲み干した。
そんな時だった。
「じゃあそろそろ席替えしようか!
せっかくだし、実習先のドクターと隣になるように座りなおそう」
と、幹事の男性が仕切り出し、気づけばわたしは藍沢先生の隣に座らされていた。
藍沢先生には研修医時代、これでもか!というほどよく怒られていたから、無意識にピッと背筋が伸びた。
「あの、藍沢先生。
わたし、臨床実習を米花中央病院で受けることになっているんです。
その時は、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると、藍沢先生は相変わらずクールに返事をする。
「…どうも。
…どの論文読んだんだ?」
「え?」
「さっき、俺の論文読んだって」
「えっと…
脳底動脈閉塞による脳梗塞に対する治療
藍沢先生、書かれてますよね…?」