第33章 お持ち帰りの仕返し?!
「その人をベッドで寝かせた時に、松田くんって名前呼んでたんだよね…」
「え…」
「そのあと、好きって言ってたように聞こえた…」
「マジ?ヤバいじゃん」
さっきまで、大したことない。って顔してたアユが、当然真剣なトーンでわたしを見た。
その顔を見て、わたしもみるみるうちに焦りが生まれてくる。
「やっぱりヤバい?!ヤバいよね?!」
「え、その女の人と陣平さん、2人きりで家に残してここにきたわけ?」
「だ、だって!オリエンテーション休んだら実習行けないじゃん!」
「…今頃2人で…ベッドで絡んでたりして」
「………うそ…やだやだやだ!!やめて!!」
わたしの反応を見て楽しんでるのか、アユはワザと意地悪を言ってくる。
半泣きになるわたしの頭を撫で撫でしながら、アユはあっけらかんと笑った。
「ま、陣平さんに限ってそんなことないってー!
あ。そうだ!今日飲みに行かない?
パーっと憂さ晴らしにさ!」
「飲みぃー?」
「うん!各実習先のドクター達と、交流会があんのよ。
ミコトも来なよ!
米花中央病院からも、脳外の先生来るから!」
米花中央病院…
普通大学の臨床実習は、その大学の附属病院で行うことが多いのだが、うちの大学は米花中央病院とも提携していて、わたしはそこに実習に行くことになっている。
米花中央病院は、陣平くんが命と引き換えに守った場所だ。
彼は爆弾がどこの病院に仕掛けられているかの情報を得るために犠牲になったと、後にお姉ちゃんから聞かされた。
だから、11月7日のあの事件がもし過去と同じように起こるのであれば、米花中央病院にあらかじめコネクションを持っておけば何かできるかもしれない。
そう考えた。
安易な考えかもしれないけど、きっとこれが陣平くんを救う突破口になる。