第32章 寝言の理由 ☆
陣平くんの腕の中で陣平くんの匂いを感じながら、この人はわたしの恋人だって思いたい。
すると、陣平くんはふぅ…とため息を吐いた後、わたしの髪をくしゃくしゃに撫でながら笑った。
「しゃーねぇな!
ワガママプリンセスめ!」
そして、わたしの手を引いて、ベッドの形にしたソファーへと誘った。
「来いよ、一緒に寝ようぜ」
「うん!」
パタパタと尻尾を振りながら、陣平くんが両手を広げておいでをしてくれる腕の中に飛びついたわたし。
2人で寝転がってみると、ソファーベッドとは言えなかなかの狭さだ。
陣平くんはわたしの身体をくるんと前に向けると、後ろから抱き枕のようにして抱きしめた。
「狭いから、後ろから抱き枕にさせてくれ」
「うん…」
陣平くんの逞しい腕が、わたしの身体を丸ごと包み込んでくれるみたいで、幸せで思わず目の前に回された彼の腕をきゅっと掴んだ。
陣平くんの腕の中で眠る瞬間が、一番幸せだ…
好き…
大好き。
そんなかけがえのない時間を噛み締めていると、陣平くんがわたしの耳元で息を吹きかけながら囁いた。
「お前の身体、柔らかいな」
「ん…耳元で囁かれるとくすぐったいよ…」
耳に息を吹きかけられると全身の力がフッと抜ける。
その隙をついて、陣平くんはわたしを抱きしめている腕を少し動かした。