第32章 寝言の理由 ☆
松田side
居酒屋に入り、ビールジョッキを片手に持つと佐藤はそれを一気に流し込んだ。
「っあー!!働いた後の一杯は最高ね」
「オヤジかよ」
その豪快な飲みっぷりに呆れながら、俺もビールを喉に流し込んで行く。
串に刺さった焼き鳥をかじるとき、不意に思った。
今日のメシ、なんだったんだろうと。
時間的に、もう準備していただろうな…
ミコトに悪いことをした。
今日は飲みに行くと連絡をすると、ミコトからは「わかった!」とだけ返事が来た。
怒ってるのか、なんとも思っていないのか、その一言じゃ想像が出来ない。
帰ったら、土曜日どこ行きたい?って聞いてやらねぇとな。
どうも、俺はミコトのことになると人が変わったように心配症になるらしい。
そう思いながらまたジョッキを手に持った時、佐藤が俺に話しかけた。
「どう?一課に来てしばらく経つけど。
もう慣れた?」
「どっかの誰かさんが一日中俺を連れ回すせいで、慣れるどころの話じゃねぇよ」
このタフな女に付き合ってると身体がいくつあっても足りねえぜ。
そう思いながらも、久しぶりの生ビールが美味すぎて、気付けばジョッキを4杯開けていた。
そしてその倍、佐藤はアルコールを体内に入れている。
「あー!その目、私のこと女らしく無いとか思ってるでしょ?!」
「…まあ思ってるな。」
馬鹿正直に答える俺。
自分の彼女と比べると、それこそ女らしさなんて微塵も感じない。
それでも捜査一課ではマドンナ的存在だ。
やっぱ狂ってるな、警察組織は…