第31章 2人の部屋で初めての夜 ☆
オートロックを開けてマンションのエントランスをくぐり、自宅前に立つと中からもうすでに美味そうな匂いが漂って来ている。
ガチャリとドアを開けてただいまを言うと、エプロンを付けたままのミコトがキッチンからひょっこりと顔を出した。
「陣平くんだー!!」
この時間に帰るのは一緒に住み出してから初ということもあり、ミコトは、ぱあっと顔を明るくしながら俺の方へ駆けてきた。
それを両手を広げて待ち構える俺。
まるで子供と親みたいだ。
俺がミコトを子供扱いしているとは露知らず、ミコトは広げた俺の腕の中に飛び込んできた。
「おかえりなさい!」
「ただいま」
ぎゅーっと身体を密着して抱きしめ合うと、ミコトの柔らかい身体が全身で感じ取れる。
抱きしめあっただけで、簡単にその気になる俺は、自分に呆れながらぽつりとこぼした。
「…子供扱いできねえな、これは」
「え?なに??」
「いや?こっちの話。
何作ってたんだ?」
ミコトの髪を撫でながら尋ねると、胸を張りながら今日の献立の説明を始めた。
「今日はね、メインは牛カツレツにしたの!
それにポテトサラダと、グリーンサラダ。
あとミネストローネも作ったよ!」
「うわ…美味そ…腹減った」
「もうすぐ出来るから、先にお風呂入って来て?」
まるで新婚みたいなそのやり取りが自然に発生するあたり、一緒に住み始めて良かったと思った。
言われるがまま、俺は飯ができる前に先に風呂に入ろうとバスルームに向かった。