第4章 俺と萩原
俺はミコトの目に浮かんだ涙を指で拭いながら言う。
「お前がこんなに泣いてばっかだと、萩は安心して天国に行けねぇよ」
ミコトに、こんな残酷なことを言わないといけないのがたまらなく辛くて、俺はミコトの手を取ると自分の腕の中に閉じ込めた。
初めてだった。
ミコトをこんな風に抱き締めるのは。
細くて華奢な肩がガタガタ揺れていて、強く抱き締めると折れそうなぐらい細い身体だ。
ミコトは俺の胸に身体を預け、泣きながらわがままを言う。
いつもこうやってわがままを言うミコトを、慰めていた萩はもういない。
「行かないで欲しい…
お兄ちゃんの幽霊なら、怖くない」
「未来のお医者様が、そんな非科学的なこと言うなよ」
わざとハハッと笑いながら身体を離すと、ミコトの髪を撫でた。
あの頃と同じ、クシャクシャと撫でると、ミコトのサラサラの髪から良い匂いがした。
「俺が、ずっと隣にいてやるから。
萩に言えなかったこと、ちゃんと伝えてやれ」
そう言ってミコトの手を握り、引いてやると、ミコトはフラフラな足を何とか動かし、2人で手を繋いだまま本堂へ向かった。