第4章 俺と萩原
萩原の葬式は、萩原に似合わねえほどしんみりしていた。
萩原のことが好きだった女がたくさん来て、啜り泣く声が絶えない。
寺に足を踏み入れると、縁側の柱にもたれ、目から涙を垂れ流しながらぼーっと庭を見るミコトを見つけた。
まるで壊れた人形のように、喚きもせず、しゃくりあげもせず、ただ涙だけがひたすら流れてはミコトの頬を濡らした。
「陣平」
ふと、誰かが名前を呼びながら俺の肩を叩いた。
「千速…」
千速は強い女だ。
ボロボロになってるミコトとは違い、気丈に振る舞い、弟の最期の世話をテキパキとこなしている。
「ミコト、何も食べないんだよ…
水もほとんど飲まないし。
…陣平、そばについててやって?」
俺は静かにミコトの隣に腰を下ろした。
「ミコト」
俺の呼びかけに、小さくぴく…と反応したミコトだが、何も返事をせずに変わらず庭を眺めている。
「飯、なんも食ってねぇんだろ?
千速から聞いた」
「…食べる気になれない」
消えそうな声でそう言うミコトに、俺は残酷なことを言う。
残酷だけど、これが現実なんだ…
「ミコト。今日で最後なんだ。
萩と、ちゃんとサヨナラしてやれ」
「…サヨナラなんて言いたくない」
そう言うとまたボロボロと泣きながらまた黙り込んだミコト。
萩が死んで、ずっと泣いてるんだろう。
目は擦りすぎて赤く腫れているし、頬には涙の跡が残るほどだ。