第31章 2人の部屋で初めての夜 ☆
松田side
今日は抱かない
そう決めて、何度も自分に言い聞かせていたくせに、もうそのポリシーは崩壊しそうだ。
ミコトが可愛い顔して、「ぎゅーってして?」と言って来た時、即座に抱きしめようとした自分を必死な思いで制止した。
「今度な」とだけ言ってゴロンと寝返りを打ったが、心臓はバクバクと音を立てている。
ぎゅーってして?って、んな可愛いこと言うなよ…
一瞬で理性が溶けちまうだろう…
はぁ…とため息を吐きながら落ち着け。と言い聞かせていると、次の瞬間、ミコトは俺の背中にぴとっとくっついて来た。
そして寂しそうな声でぽつりと零す。
「好きなのに…」
その言葉に、俺は思わず心の中で
俺だって好きだよ!バカヤロウ!
なんて怒鳴ったが、ミコトに聞こえるはずもなく。
背中にくっついたミコトの身体の柔らかさが、俺の背中全部で感じて取れた。
まずい…触りてえ…
抱きしめてえし、キスしてえ…
だんだんと自分の中で、ミコトを好きな気持ちとミコトに対する欲が膨らんで来て理性で抑え込むのも一苦労だ。
今日は抱かない
今日は抱かない
心の中で何度も何度も念仏のように唱えて、ミコトがくっついてくるのにシカトを決め込んでいると、ミコトの拗ねた声が聞こえてきた。
「陣平くん、わたしのこと嫌いなの…?」
「はあ!?」
まさかの質問をされた俺は、んなわけねぇだろ!?と言わんばかりに勢いよくミコトの方を向いた。