第31章 2人の部屋で初めての夜 ☆
セミダブルベッドの片側を半分開けた状態で、陣平くんは既に寝転がって目を閉じていた。
「もう寝た…?」
小さい声で話しかけると、陣平くんの目がぱち…と開いて、わたしの姿をとらえた。
「…いや?目ェ瞑ってただけ」
「隣、寝てもいい?」
「どーぞ」
そう言って陣平くんは、またゆっくり目を閉じた。
やっぱり今日はこのまま就寝だよね…
内心、ほんの少しがっかりしながら陣平くんが眠る隣に身体を寝かせた。
寝具もベッドも新調したから、前の家で感じた陣平くんの匂いが感じられず、寂しい気持ちになった。
「陣平くん」
「んー?」
「ぎゅーってして?」
陣平くんと一緒にいるのに、彼の匂いを感じないのは嫌だ。
そんな気持ちから、わたしは目を閉じる陣平くんにそう縋った。
「…今度な」
陣平くんはそれだけ言って、ゴロンと向こうを向いてしまった。
今度って…なんで?
今日から一緒に住み始めたのに、ぎゅーもしてくれないの?
家具組み立てるときは、わたしが抱きつくと嬉しそうにしてたのに…
陣平くんの真意がわからず、戸惑いを隠せなくて、わたしは陣平くんの背中にぴと…とおでこをつけた。
「好きなのに…」
ぽつりとそんな言葉が溢れた。
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