第31章 2人の部屋で初めての夜 ☆
松田side
「あっぶね…」
バスルームに入りシャワーをひねってお湯を頭から被りながら、俺は安堵のため息をついた。
さっき、大好きだよと言いながら俺に抱きついて来たミコトを、うっかり抱きしめ返してうっかりキスをして、うっかりそのまま抱いてしまいたいなんて思ってしまった。
慌てて理性を取り戻した俺は、汗かいたからと言い訳をしてミコトから身体を離した。
ここ数日、引っ越し準備で大変だった上に、明日は大学の授業が一限からだと言っていた。
ミコトを両親から引き離して同棲している手前、俺本意な理由で授業をすっぽかさせるわけにはいかねぇ。
一緒に風呂なんて入ったらそれこそ朝までコースになっちまう。
今日は我慢だ…我慢…
自分にそう言い聞かせながら、目を閉じるとさっきのミコトの大好きだよ。がまた頭に浮かんできた。
「っ…可愛すぎんだろ?!俺の彼女!!」
あぁぁ!と頭を抱えながら自分の彼女の可愛さに悶絶する俺を見て、萩原は呆れて笑ってそうだ。
今日は何もせずに手を繋いで寝る
何なら手を繋ぐのすら危険だ。
隣に川の字になって寝る。
と、何度も自分に暗示をかけながら、ガシガシと頭を洗った。
今日はミコトを抱かない。触れない。
そう思っているくせに、無意識に身体をいつもより念入りに洗う俺は馬鹿なのか?
そう自分自身にツッコミを入れながらも、俺は身体をピカピカにした状態でバスルームを出た。
部屋着に着替えて頭をタオルで拭きながらリビングに戻ると、俺に気付いたミコトはパッと俺の方を見た。
「いつもよりゆっくりだったね!」
「な!そ、そんなことねえだろ!いつもと一緒!」
と、俺が念入りに身体を洗ってたことを見透かされている気がして、思わず声を荒げた。
「そうかなあ?…まあいいや。
わたしもお風呂入ろっと」
そう言いながら、それ以上深く突っ込まず、ミコトは鼻歌を歌いながらバスルームに向かった。
「今日は抱かない…今日は抱かない…」
俺はリビングでソファーに座りながら、まるで暗示のようにそう唱えていた。
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