第30章 ライバルとの初対面
松田side
レストランで食事を終えた俺たちは、ショールームフロアを周り、ベッドやダイニングテーブルの選定を始めた。
まさか休日にこんな場所で職場の人間と会うとは思っても見なかったが、まあそういう偶然もあるよな…
と、思えるほど俺にとっては些細な出来事だった。
気を取り直して、ベッドをどれにしようかと迷っているとき、隣りにいたミコトがぽつりと言った。
「さっきの人、ふたりとも美人だったね!」
「さっきの?……あぁ。そうか?」
一瞬、誰の話をしているのか分からなかったが、すぐに理解して俺は首を傾げた。
そんな俺に、ミコトは何言ってるの?と言うふうに俺と同じように首を傾げながら俺を見た。
「そうだよ!職場でモテモテでしょ?」
「あー…確かに、親衛隊みたいなやつ大勢いるな」
佐藤と一緒にいた交通課はよく知らないが、佐藤美和子は捜査一課のマドンナ的存在だ。
俺と組むことになって面白くないと思っている刑事はごまんといるだろう。
なるほど。それはあの女が美人だからか。
そんな簡単すぎる方程式の答えを、今更気づいた俺は、ナルホド。と頷いた。
佐藤美和子は常に俺に怒っていて、この女のどこがいいんだ。なんて思ったりしたこともあるからだ。
そんな俺に、ミコトは少し心配そうな顔をしながら尋ねた。
「陣平くんも、美人だなって思ったりする?」
拗ねたような顔をしながら、ぽつりとそう溢したミコトが可愛くて、俺は思わずミコトを手を引いて自分の方へ引き寄せた。