第30章 ライバルとの初対面
その場で抱きしめそうになる寸前で思い留まり、ごまかすみたいにミコトの額にデコピンを食らわす。
ビシッ
「いたっ!!なにすんの!?」
「お前がバカだからだ」
お前がいるのに、他の女を美人なんて思うわけねえだろ。
俺のこと、そんな気の多い男だと思ってるのかよ。
そうミコトに伝えればいいのに、俺は言葉にせずにいる。
こう言うところがダメなんだと分かっているのに、いざ言葉にして伝えようとすると途端に恥ずかしくなってどうしようもねぇ。
理不尽にデコピンされたミコトは、額を手で抑えながら口を尖らせる。
「意味わかんない。わたしのどこがバカなの」
「俺のこと何にもわかってないからな」
「…美人って思ってる?って聞かなくてもわかるだろ。ってこと?」
「そうそう」
「やっぱり、陣平くんも美人だと思うよね…」
ん??
俺が考えていたことと真逆の解釈をするミコト。
たまりかねて俺はとうとう言葉に出して伝えた。
伝えさせられた。と言った方が正しいな。
「美人って思ってる?って聞かなくてもわかるだろ?
俺は、お前以外の女には興味無いんだよ。
ミコト以外は全員ジャガイモ」
「じゃが…」
突拍子もないことを言う俺に、ミコトは少し苦笑いしながら俺を見た。
「それだけ、お前しか見てねえってこと。」
「…陣平くん」
「だから、早く買い物済ませて家帰って組み立てようぜ?
…俺たちの家なんだから」
「うん!!陣平くん大好き!!」
ミコトは嬉しそうに笑って俺の腕にしがみついて来た。
単純なやつだ。けれど、単純なはずなのに俺はミコトを不安にさせてばかりだな。
けれどそれも、きっと一緒に住むことで多少解消されるはずだ。
俺にとって、ミコトが唯一無二の存在であること、ミコトにもっと強く自覚してほしい。
同棲は、そのためのプロセスだと思ってる。
今日は帰って家具を組み立てたら、新居で初めての夜だ。
2人で、一生忘れられないひとときにしたい。
ガラにもなく、そう思ったんだ。
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