第30章 ライバルとの初対面
ミコトって名前なんだ。この子。
当たり前だけど、ちゃんと名前で呼んでるんだ。
私にはいつも、おい。とかあんた。とかなのに。
「だって陣平くん、言うこと聞かないし口悪いし態度もデカイでしょー?」
「バァカ。俺はこう見えて意外と従順だぜ?」
「うそばっかりー!」
こんな他愛ないやり取りが、物凄くいちゃついているように見えてしまうのは、私が松田くんを好きだからなの?
「美和子!はやく食べて買い物行こ?
今日あんまり時間無いんでしょ?」
きっとわたしが複雑そうな顔してたのに気付いたんだ。
由美がそう言って私が食べていたお皿を私の方へ突き出した。
時間無いなんて嘘。
由美は普段は大雑把なところあるのに、こういうところ細かい気配りができる子なんだよね。
由美に言われるがまま、私は料理をどんどん口に運んでいった。
ついさっきまで、美味しそうーと思っていた料理のはずなのに、なぜか何の味もしなかった。
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