第30章 ライバルとの初対面
松田くんは、彼女が可愛くて仕方ないって顔で見つめてる。
「み、美和子。
レストランやめとく?」
「え?どうしてよ。
お腹すいたんだから、行くわよ?」
ここで逃げたら、ますます私が松田くんを意識してるみたいじゃない!
そんな意地なのか、強がりなのかわからない気持ちで、私はトレーにどんどん料理を乗せるとズンズンとレジの方に進んでいった。
そんな私を、由美は苦笑いしながら見てる。
「でも、あの松田くんにあんな可愛らしい彼女がいたとはねえー。
ぱっと見、若いわよね?いくつなんだろ」
「あいつ、あれで結構優しいところあるから、そりゃ彼女だって可愛い女の子でしょうよ。
毎日彼女の話しして惚気てるし」
「それ、わざわざ聞いてあげてんの?美和子。
そんなの聞かなくていいからねー?」
「はいはい。
気を取り直して、美味しいものたくさん食べましょ!」
空元気を振り撒きながら会計を済ませ、トレーを持って座る先を探したけれど、さすが日曜日のお昼時、人の数が半端じゃない。
由美とふたりキョロキョロと空いている席を探してると、2人崖の席がひとつだけ偶然空いていた。
神様は相当いたずらが好きらしい。
空いていたのは松田くんが座る席のすぐ隣だ。
「み、美和子…別の席空くまで待つ?」
「…座りましょう!
何で私達が気を使って席を譲らなきゃいけないのよ!」
「いや…気を遣うとかそんなんじゃなくって…」
「いいから!とっとと食べて買い物に行くわよ?」
そう言って私達はズンズンとその席へ進んでいき、がたっと音を立てて椅子に座った。
しかし松田くんは、私と由美が隣りに座ったことに全く気付いていない。
知り合い(しかもほぼ毎日会っている)がすぐ近くに座っても気づかないなんて、それでも刑事なの!?
なんて理不尽に文句を言いそうになったけれど、その理由はすぐに分かった。
松田くんは、ずっとカノジョの方を優しそうな目で眺めていて、松田くんの目にはカノジョしか映ってない。
顔を見るだけで分かった。
物凄く好きなんだな。この子のこと。
惚気けるだけのことはある。