第30章 ライバルとの初対面
休日ということもあってか、レストラン内は人でごった返している。
席を見つけるのにすら一苦労しそうだ。
トレーを持って、食べるものを取りながらレジに進んでいるとき、由美が私に不意打ちの質問を繰り出してくる。
「美和子ってさ、好きな人いないの?」
さっき松田くんのことを思い出したばかりの私は思わず身体をびくっと震わせたけれど、すぐに平静を装って返事をする。
「!?何?突然」
「いや、非番の日に会いたいなーと思う人はいないのかな?と思って。」
あんたが非番の日に連れ出したんでしょ!と突っ込みたくなる気持ちを抑え、私は料理を取りながら半ば投げやりに答えた。
「別に私だって会いたい人ぐらいいるわよ」
「へー?それって、もしかして白鳥くん?」
「バカね、そんなわけないでしょ?」
「じゃあ、松田くん?」
白鳥くんの次に出てきたその名前に、私がお皿を取る手がピクッと止まる。
「…そんなんじゃ、ないから」
「美和子、わかりやすいねえ。」
「べ、別に私は松田くんのことどうも思ってないから!
口悪いし態度もでかいし!」
松田陣平を好きになるはずがない理由を必死に探して並べていると、由美が向こうを指差しながら言った。
「あ。松田くん」
「ちょっと由美聞いてる?!」
「あれ!松田くんじゃない?」
途中から話が噛み合わなくなった私と由美。
私の肩をバシバシと叩きながら由美が指差す先にいたのは、紛れもなく松田陣平だ。
私服の松田くんを見るのは、思えば初めてだった。
いつも黒っぽいスーツ着てたから。
彼の姿を遠目から眺めていると、すぐ隣にいた女の子がスッと松田くんの腕に自分の腕を組んだ。
あれが噂の彼女か…
この間は見たのは夜の公園で遠目だったけど今ははっきりと見える。
すこしタレ目な丸い瞳に、女の子らしいサラサラのセミロングの髪。