第30章 ライバルとの初対面
陣平くんはわたしの頭を片手で掴むと、食べるようにわたしの口内に舌を侵入させた。
「んんっ…ぁ…ッ」
「っん……っ」
キスの合間に漏れる2人の吐息が重なって、ああ。IKEAに行くの諦めろってそう言う意味だったの?とさすがに鈍感なわたしでも理解した。
クチュ…ちゅく…と舌を絡める音が脳に響いて、わたしも何も考えずにこの幸せすぎる快感に身を任せてしまおうか…
陣平くんの首に腕を回して、陣平くんの舌を味わうみたいにキスを受け入れていると、陣平くんは唇をゆっくりと離してわたしが着ているTシャツの下から手を滑らせて来た。
「な、IKEAは諦めるだろ?」
「んあっ…」
耳元で息を吹きかけられながら、陣平くんが珍しく甘い声でわたしに囁く。
思わず喘いだわたしは、首を縦に振りそうになった。
だけど、待って。
次陣平くんの休みはいつになるかわからない。
そうなると、ベッドもない今、しばらく布団をフローリングの上に敷いて寝ることになる。
それに、今日から同じ家に住むんだし、こういうのは夜でもできるよね?!
即座に脳を回転させる打算的なわたしは、やる気満々の陣平くんの身体をグッと離した。
「え?ミコト。」
「ダメ。IKEA行くの!」
「こ、ここまで来ておあずけっすか…ミコトさん…」
ガクッと肩を落としてわたしの胸にぎゅーっと抱きついてくる陣平くん。
可愛すぎて、いいよって言ってしまいそうになるけど、心を鬼にして陣平くんの癖っ毛を撫で撫でするだけにとどめた。
「夜までお預け」
「夜まで…」
まじかよ…と言う顔をする陣平くんに、わたしはまるでワガママを言う子供を叱る先生の気分になる。
「だって、今日のお昼逃したら必要なもの買って組み立てる計画が流れちゃうでしょ?」
「…まあそうだよな…
じゃあ夜まで我慢するわ。」
「うん!」
陣平くんより珍しく上手に立てた?と嬉しくなったのも束の間。
「そのかわり、夜は寝かせねえから」
「ぅえっ!?!」
「ほら、とっとと出かける準備するぞ」
結局、陣平くんの言動にいちいちドキドキしたり振り回されっぱなしのわたしなのだった。
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