第30章 ライバルとの初対面
不動産屋で長時間モメて決まった物件は、築浅でエントランスも綺麗、周辺も治安が良さそう。
スーパーからも最寄駅からも近く、マンションまでの道のりは人通りも多いしお店も多い。
陣平くんが必須と言ってたオートロックもちゃんとついてる。
ここがわたしの新しい家か…
しかも、陣平くんと住む家
ポヤーッと妄想に胸を躍らせていると、引っ越し業者の人が荷物をトラックから下ろしながらわたしの妄想の邪魔をする。
「じゃあ、荷物入れていくんでどこに置けば良いか指示をお願いします」
「あっ!はい!!」
慌てて業者よりも先に玄関を開けようと部屋に急ぐわたしと陣平くん。
陣平くんが鍵を開けて中に足を踏み入れると、少しだけ新しい匂いがした。
まだ築2年。
以前住んでいた人は仕事の都合で2年しか住んでおらず、ほとんど新築同然だ。
この匂いが、そのうち消えてわたしと陣平くんの二人の匂いに変わるんだ。
そう思うとまた顔がニヤつく。
「えへへ…」
「なにヘラヘラしてんだよ。」
呆れた顔してわたしを見た陣平くんは、引っ越し業者に家具の配置の指示を始める。
わたしは陣平くんに任せっきりにして、とりあえず邪魔にならないバスルームの整理を始めた。
陣平くん、年上だしああ見えてしっかりしてるから頼りになるんだよね。
なんて、彼に丸投げしてるのを正当化しながら、バスルームにシャンプートリートメントなど、前の家から持ってきたものを並べた。