第4章 俺と萩原
11月7日
俺と萩原は2箇所に別れて爆弾を解体していた。
そして、先に終わったのは俺の方で、どうやら本命は萩原が担当する場所に仕掛けられていた爆弾の方だったらしい。
すぐに車でそのビルに向かった俺は、萩原に電話をかけた。
「なにちんたらやってんだ。早くバラしちまえよ」
そう言うと萩は笑って、タイマーは止まってるからのんびりやればいいんだよと、いつもの調子で言う。
「それより、防護服はちゃんと着てるんだろうな?」
「あんな暑っ苦しいの、着てられっか」
「馬鹿野郎!死にてぇのか!?」
俺がそう怒鳴ると、萩はどことなく真剣な声でつぶやく。
「まあ、そんときは仇をとってくれよ」
そんな縁起でもねぇことを笑って言う萩に、俺は電話口に向かって低い声で言った。
「…怒るぞ」
「っはは。冗談だよ、冗談。
俺がそんなヘマするわけないだろ?」
この期に及んでまだ冗談を言う萩原に呆れながら、俺はいつもの場所で待っているから、はやく終わらせて来いよ。そう言った。
まるで当たり前のように、これを終わらせたらまた萩原と飲める。
そう信じて疑わなかったからだ。
その時、電話口で萩原が焦ったように叫んだ。
「タイマーが!復活した!」
「…萩原?」
俺の声は萩原には届いていないらしい。
大きな声で周りにいた隊員に逃げろ!と叫び、その時携帯がカシャンと地面に落ちる音がした。
「おい!萩原!!」
いくら呼んでも、萩原から返事はこない。
そして、俺が当たり前だと思っていた未来が
次の一瞬で塵になった。
ドォォオオーン
大きな爆発音とともに、ビルの階層から黒煙が舞い上がる。
俺は、何度も萩原の名前を呼んだ。
何度も。
きっと、爆発する時に携帯が吹っ飛んだだけだ。
萩は生きてる。死ぬはずがねぇ。
あの黒い煙と爆発をこの目で見た癖に、
そんな夢物語を、俺はずっと信じて疑わなかった。
萩は死んでねぇと、信じてた。
霊安室で、ミコトと千速が号泣しているのを見るまでは。