第29章 この部屋で過ごす最後の夜 ☆
わたしが作ったお弁当を陣平くんは大喜びで食べてくれた。
ひたすらに陣平くんに喜んでほしいことだけ考えて作った手料理を、こんな風に陣平くんが美味しそうに食べてくれているのを眺めるのが、わたしの至福の時だ。
「ふぁー。美味かった。
生き返ったぜ」
満腹になったお腹をさすりながら、陣平くんは満足そうに笑った。
「明日は早起きだし、お風呂入って寝ちゃおう?
1日で引っ越し終わらせなきゃいけないんだし」
「だな。
じゃあ、お前先に風呂入れよ。
洗い物ぐらいは俺がやるからよ」
「じゃあ、お言葉に甘えてそうするね。」
そう言って陣平くんの部屋で最後のシャワーを浴びた。
ふと風呂場に置いてたわたしのクレンジングオイルが目に入る。
タイムスリップする前は、陣平くんがコンビニで買ってきてくれたっけ。
タイムスリップして彼女になってからは、陣平くんの部屋にわたしの私物が当たり前に増えていくのが嬉しかった。
明日からは、二人のものが同じ家に集まるのがもっと当たり前になるんだね。
上機嫌にシャワーを終え、陣平くんの服を着て髪を拭きながらワンルームに戻ると、陣平くんは洗い物を終えてテレビを見ながらうたた寝をしている。
「陣平くん?お風呂、空いたよ?」
「えっ?…あー。寝てた…」
「疲れてるもんね。朝からずっと仕事だったし」
「まぁなー。この街、やっぱ呪われてんじゃねぇ?ってぐらい、事件、事件、事件だ」
くあぁーと欠伸をしながら、陣平くんはフラフラと立ち上がるとバスルームへと向かった。
陣平くん、ほんと捜査一課に異動してから毎日大変そうだな…
一緒に住むんだし、ちゃんと栄養あるもの毎日作ってあげなきゃ。
彼の身体を心配しながら、明日からの献立を頭の中で考え、髪を乾かすわたし。