第29章 この部屋で過ごす最後の夜 ☆
そうしているうちに、陣平くんは早々にシャワーを切り上げて出てきた。
「はやいね!」
わたしの半分の時間でシャワーが終わるとはさすが男の子。
そんな風に驚くわたしの前に、陣平くんはまるでワンコみたいにストンと座った。
「ん…乾かして」
そう言ってドライヤーを持つわたしの方へ、彼は頭を傾けてきた。
「か…可愛い…陣平くん、甘えん坊さんなの?」
「…やっぱいい。やめる」
「あ!待って!待って乾かす!!」
可愛いとか笑われると、拗ねてそっぽを向く陣平くんに、わたしは慌てて彼の腕を掴んだ。
すると陣平くんは、またわたしの前に頭を傾けてくる。
可愛い…
癖っ毛も相まって、可愛さが渋滞している…
普段は野獣のような自分の彼氏がたまに見せるこの子犬感がたまらなく可愛くて、わたしは悶えながら陣平くんの髪を乾かした。
「陣平くん、トイプードルみたい」
「はあ?!」
「や、ポメラニアンかな。
ポメラニアンに似てる」
「どっちも違うだろどう見てもどう考えても!」
トイプードル、ポメラニアン
どちらもお気に召さなかったようで、陣平くんはムスッと口を尖らせた。
「えー?どう見ても小型犬だよ?今の陣平くん」
大人しくわたしに髪を乾かされてた陣平くんは、ピクッと身体を揺らした。
そして、だんだん不満オーラがもやもやと浮かび上がってくる。
「…へぇ?俺が小型犬だって?」
「じ、陣平くん?なんか怒ってる?」
嫌な予感がしてきて、恐る恐るそう聞くと、陣平くんはわたしの両腕を掴んで、わたしの首筋に舌を這わせた。
「あっ…じ、陣平くん?!」
「俺小型犬らしいから、舐めたんだよ。
飼い主のこと、よく舐めるだろ?あいつら」
そう言いながら、陣平くんの舌が首筋から鎖骨へとゆっくり移動してくる。
「ふふっ…くすぐったいよ陣平くん」
舐められるとくすぐったくて、思わず片目を瞑るわたしを、陣平くんはじ…と上目遣いで見てくる。
「これも、くすぐったいのか?」
そう言って、彼はわたしのキャミソールをずらしてブラを露出させた。