第29章 この部屋で過ごす最後の夜 ☆
「陣平くんの好きなカレー味の竹輪と、陣平くんの好きなチーズ入ってるハンバーグ。
あとはほうれん草のおひたしに酢の物も入れておいたから疲れも取れるよ?
おかずだけじゃ足りないって思ったから、おにぎりも」
見ると俺の好きなものばかりが敷き詰められている。
どれも美味そうで、ぐぅーっと大きな腹の虫が鳴った。
「お前、どうして…」
「陣平くんお腹空いてるかなと思って、一度家に帰って作ってきたの。
保冷バッグに入れてたから、レンジであたためるね?」
そう言って立ち上がり、即座に電子レンジに向かおうとする俺の世話焼きな彼女。
そんなミコトの腕を咄嗟に掴み、俺は自分の腕の中にぎゅっと抱きしめて閉じ込めた。
「え?じ、陣平くん?」
「好きだ…お前のこと、すげえ好き」
俺から、その言葉がこぼれ落ちた。
言わずにはいられなかったんだ。
「俺、口悪いし態度デカイし、頑固なとこあるから、一緒に住んでお前のこと困らせることあるかもしれねえけど。
大事にするって、約束する。一生」
「…やだ。泣きそうになるからやめてよ…」
そう言って涙声で笑うミコトの頬に手を添え、俺はゆっくりとミコトの唇を奪った。
何度キスしても甘く感じるこの唇を、これからは毎日堪能できるんだと思うと、幸せすぎて頭がおかしくなりそうだ。
ゆっくりと唇を離すと、ミコトは照れたように笑った。
「陣平くんとキスするの、好き」
「なんだよ。キスする時だけ?」
「…陣平くんが、大好き!」
拗ねたように言葉の揚げ足を取る俺に、ミコトはあははと笑いながら俺に飛びついてきた。
腹減ってることも忘れて、ひたすらにイチャイチャする俺たち。
きっとこれからもこうして、ミコトと一緒に生きていくんだ。
そう思った。
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