第29章 この部屋で過ごす最後の夜 ☆
松田side
萩原の墓参りを終えた俺は、呼ばれるがまま佐藤の車に乗り込み、捜査活動を再開した。
今日は絶対に日付が変わるまでに帰る。
そう心に決めていた俺は、いつもの100倍のスピードで、仕事をこなして気付けばもう外は暗くなっている。
「あーー!終わった!」
本庁の捜査一課の自分のデスクに突っ伏した俺。
脚を使ってクタクタになるまで捜査したあとに、事情聴取のまとめ作成って…
警察官という職業はつくづく給料の割りに合わねぇ仕事だと痛感する。
そんな俺を見て、佐藤美和子は目を丸くして物珍しいものを見るかのような顔して俺を見た。
「あら。もう終わったの?
いつもの倍以上の速さじゃない」
「今日は日付が変わるまでに帰るって言っちまったからな。
男に二言はねえってことだ」
そう言ってドヤ顔をする俺に、佐藤は複雑そうに眉を顰めて聞いた。
「…彼女?」
「あぁ。俺のアパートに泊まりに来てるんだよ、今日。」
「ああ。そうなの…」
「そ。あんたも明日非番だろ?
タフなのは感心するが、非番の日ぐらいゆっくりしろよ?
なんなら、男捕まえてデートのひとつや二つ、楽しめよな」
一言も二言も多いのが、俺の欠点らしい。
何気なく言った俺の発言に、今度は声を荒げて怒る佐藤。
「余計なお世話よ!
明日は由美とお出かけなの!
…それとも、松田くんがデートしてくれるのかしら?」
「デート?俺と?してぇのか?」
「じょ、冗談よ!本気にしないでよね!」