第29章 この部屋で過ごす最後の夜 ☆
お寺について、住職さんに挨拶をしたあと、萩原家の墓に向かうと、もうお兄ちゃんの同期の方達が集まっていた。
「こんにちは」
そう言って声をかけると、降谷さん、諸伏さん、伊達さんはわたしを見て笑いかけてくれた。
「久しぶりですね。ミコトさん」
「降谷さん。それに諸伏さんと伊達さんも随分ご無沙汰しております」
考えてみれば、降谷さん以外のお二人とはお兄ちゃんのお葬式以来会っていない。
去年は陣平くんと7日にお墓参りしたから、3人とは会わなかったし…
「2年ぶりだね」
そう言って優しく笑う諸伏さんも、2年前と全然変わってない。
だけどほんの少し、大人びたような気がする。
髭を生やしたせいかな?
「2年で見違えるほど大人になってるな!」
わたしを見て驚いた様子の伊達さん。
自分ではわからないけれど、少しは成長してるって思っていいのかな?
タイムスリップして来ても、ちゃんとこの時間の流れの中で歳をとっているのだと、嬉しくなった。
「松田は?」
わたしが一人で来たことに気付いた降谷さんが、陣平くんを探してキョロキョロと辺りを見渡した。
「あ、陣平くん仕事で…
なんとか抜けてくるって言ってたんですけどまだ来てないみたいですね」
「捜一は大変そうだからな」
諸伏さんがそう言った時、後ろから声が聞こえた。
「バーカ。公安の方が大変そうだって」
パッと振り返ると、陣平くんがタバコを咥えながらお供え用の花束を肩に担いで立っている。