• テキストサイズ

【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第28章 はじまりの一歩




そもそも、カノジョを大事にするタイプなんだ。
傍若無人で絵に描いたような勝手な男のくせして。


「どう言うところが好きなの?」

「何であんたに言わなきゃいけねぇんだよ」

「べつに?
私の言うこと全然聞かない、不良刑事松田くんが人を好きになる理由が知りたいだけ」


ああ。また可愛くないことを言っちゃった。
どうしてこうなの。

今度は自分にイライラして、ハンドルを回す腕が乱暴になる。
ドライバーの心情は運転に現れると言うけど、本当だ。


「悪かったな。不良刑事で」


拗ねたようにそう言ったあと、松田くんはカノジョを好きな理由を並べた。


「そーだな…
ちっせぇ頃から俺の後ろ着いてきて、泣き虫で、お人好しで、危うくて。
俺が守ってやるしかねえって思ったんだよ。」

「…幼馴染なんだ」

「まあな。もう10年以上の仲。
…あと、あいつといると癒される。それが全て」


10年以上の付き合い
私は彼と出会ってまだたったの数ヶ月だ。

松田くんが何に興味があって、好きな食べ物は何かとか、趣味はなにかとか、何も知らない。

きっと、カノジョは全部知ってるんだろう。


そして、彼が言った
「癒やされる。それが全て」

それがカノジョを好きな理由なら、到底私には無理だ。
誰かを癒やすことなんて、今まで出来た試しがないもの。


また、イライラが募っていく。
なんで?どうして?
どうしてこんなにイライラしてるの?
どうして松田くんのカノジョに太刀打ちできないなんて思ったの?

そんなこと、考えなくてもいい大人の私は気付いてた。
認めたくなかっただけ。


「…あっそう。」

「あっそうって、聞いてきたのあんただろ?
恥ずかしいこと言わせやがってよ」

「…あとちょっとで本庁だから。
仕事脳に切り替えてよね」


そんな理不尽に怒って乱暴に駐車場に車を停めた私は、車のドアを音がなるほど強く閉めた。

松田くんのことを好きだと自覚したくなくて、そんな思いを断ち切るかのように。




/ 916ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp