第28章 はじまりの一歩
松田side
ミコトを改札で見送った後、しばらくその駅で待っていると赤いRX-7が到着した。
佐藤美和子の車だ。
奇しくも、あの鬼塚教官の車そして降谷零の車と色違いのこの車のドアを開け、助手席に乗り込んだ。
「あら?非番なのにスーツなの?」
ミコトの両親に挨拶に行くために、今日の俺は普段の仕事中のスーツ姿よりもキチンとしている気がする。
「あぁ。ビシッとキメて、愛しいカノジョとデート中だったのに、誰かさんが呼び出しすっから」
「悪かったわね。イチャイチャラブラブの邪魔して」
そう言って佐藤は面白くなさそうに口を尖らせるが、今日の俺は機嫌が良い。
なんてったって、来月から家に帰ったらミコトがいる。
しかも、ミコトの手料理を毎日食える。
出勤時はミコトの顔を見てから仕事に行くことができる。
そんな奇跡みたいな日常が始まるわけだからな。
「しゃーねぇから許してやるよ」
そう言って窓の外を見ながら鼻歌を歌う俺に、佐藤は何故か拗ねたように言う。
「そんなに好きなんだ。彼女のこと」
「はあ?当たり前だろ?」
「どう言うところが好きなの?」
「何であんたに言わなきゃいけねぇんだよ」
まるでミコトみたいなこと聞いてくるな、この女。
俺が素直に吐くわけもなく、悪態をつくと佐藤は少しスピードを上げながらハンドル操作が若干荒くなる。
「べつに?
私の言うこと全然聞かない、不良刑事松田くんが人を好きになる理由が知りたいだけ」
「悪かったな。不良刑事で」