第4章 俺と萩原
11月6日
俺は萩に呼び出された。
久しぶりに飲もうと言われ、指定された居酒屋の暖簾をくぐると、そこには同期4人が集まってた。
「松田ー!遅いぞ!」
そう言いながら笑いかけてくる降谷にうるせー!と返しながら、俺は萩原の隣に座った。
「卒業して、どうよ?」
集まるのは久しぶりで、相変わらず仕事の話で持ちきりだ。
出てくる話題は全て事件に関わること。
警察学校でしていたガキみたいな話とは雲泥の差で、自分たちが半年で大きく成長したことが手に取るようにわかった。
「そう言えば、萩原の引っ越しは終わったのか?」
伊達班長にそう聞かれ、萩が笑いながら俺の肩を抱いた。
「ああ♪
俺の可愛い妹と、陣平ちゃんが2人きりで頑張ってくれてな」
「…オメーも途中からいただろ?」
そんな意味深なことを言う萩原に、後の3人が食いつかないわけがない。
「え??松田と萩原の妹って、付き合ってるのか?」
純粋なのか、諸伏が目を輝かせながら声を上げた。
「そうだよなぁ?陣平ちゃん」
萩がワザと俺を挑発するみたいに嘘をつき、降谷と伊達班長も珍しく俺を見て目を丸くした。
「おお!そうか!やったなぁ松田!」
「ちっげぇよバァーカ!!
おい萩!適当なこと言ってんなよ」
思わず全力で否定してしまうのは俺の悪い癖だな。
けれど実際2年も会ってなかったんだ。
2年前、俺を好きだと言ってきたあいつを俺はそっけなく断り、2年も放置。
今更あいつに手を出すなんか、バチ当たりもいいとこだ。
そう思っていると、隣で萩が笑う。
「まぁ、妹は俺の宝物だからなー。
中途半端に手ェ出すみたいなこと、やめてくれよな?
手ェ出すなら最後まで責任取ってもらわないと。な、陣平ちゃん」
笑ってはいるものの、萩原は真剣にそう言ってるように聞こえた。
「…そもそも、手ェ出さねぇよ」
俺にとって、萩は何より大事なダチだ。
そんな親友の宝物である妹を、俺なんかが汚しちゃいけねぇ。
そう思いながら、出された生をジョッキ一杯まるまる全部一気に喉に流し込んだ。