第4章 俺と萩原
馬鹿野郎…そんな顔すんなよ。
俺なんかのために、そんな顔すんな…
ミコトは、まだ俺のことを好きなわけ無いと思っていた。
だけど、このときのこの顔を見て、鈍感な俺でも流石に察した。
俺はミコトの笑った顔が見たくて、ミコトが思っている疑惑を即座に否定すると、良かったと嬉しそうに笑った。
顔は美しくなったのに、笑い方はあの頃のまんまだ。
お前は変わんねぇな。
そう言うと、ミコトは少し不本意そうな顔をして、大人だもんと言う。
俺は、珍しく自分の思ったことをそのままミコトに伝えた。
「あぁ。そうだな。
綺麗になったな、ミコト」
ミコトに対するこの気持ちは、好き なのか?
千速のことを好きだと思った気持ちと違う。
千速のことは、ずっと目で追いかけて、手を伸ばして届きそうで届かない。
そんな存在だったが、ミコトのことは直視できなくなっている。
ミコトを女として見ている背徳感が未だに俺の中にあるみたいだ。
2年、会わなかった間が一瞬で溶けた気がした。
ミコトとまた、こうして話せることが今の俺に取ってこの上なく、嬉しかったんだ。